2013年9月18日水曜日
松本くらくらふらふら散歩
松本マップ [LINK]
2013年、敬老の日の連休に上高地に出かけていた。上高地にいる間は幸い、ぎりぎり天気は保ったのだが、その後天気は急降下。 予報通り、台風18号が日本列島を縦断する最悪のコースをたどり、交通網はストップ。 ぼくたちもなんとか松本までは出てきたものの、足止めを食らって、思いもよらず、松本でもう一泊することになってしまった。 帰ろうと思えば帰れなくもないぎりぎりのところではあったのだが、ぼくたちの場合、途中でストップしてしまう方が最悪なので、 松本にもう一泊することとした。幸いなことに、翌日絶対に帰らなくてはならない用事もなかったので、松本に泊まってもかまわなかったのである。
そんなこんなで思いもかけず松本観光をすることになった。 とはいえ、松本についた最初は雨も降っていたし、もしかしたら電車が動くかもしれないという期待もあって、 観光で時間をつぶしつつ時々駅に様子を見に行く、という落ち着かない観光ではあった。 台風で特急のストップしてしまった松本駅の改札前には大量の人があふれていて、みどりの窓口は長蛇の列であるし、 たとえ電車が動いても、これだけの人が一気に特急に乗ったらどれだけ混むだろう、と考えると気持ちが萎えて、タイムリミットも迫っていたので、 松本に泊まることにしたのだった。その頃には雨も上がって時折青空さえのぞくようになっていて、これでどうして電車が動かないのか というような感じだったが、いちど止まった列車は点検やらなにやらでそう簡単には動かないのだろう。 はじめから松本泊を決めていればゆっくりも出来たかもしれないが、中途半端に泊まることを決めてしまったので、落ち着かない松本滞在になってしまった。
そんな落ち着かない松本滞在だったけれど、松本の街はこぢんまりとした雰囲気のいいところだった。 街全体がほどよい大きさで、長く住めば退屈なのかもしれないけれど、サイズが人間的だった。 なんとなく雰囲気がぼくの地元と似ているような気がした。どちらも城下町だからかもしれない。 奈良でいうと郡山と似た雰囲気がした。松本の方がもっと洗練されていて、郡山の方がシャビ—という違いはあるけれど。 横浜や神戸や長崎の雰囲気が似ているのと同じように、港町には港町の、城下町には城下町の雰囲気があるのだろう。 綺麗に舗装された石畳の道があって、古くから続く和菓子店があり、古い町並みが残っていて、あちこちで蔵を目にする、というような。
松本を歩いていて感じたのは、文化圏として完全に東京なのだろうな、ということだった。 大阪のにおいはもちろん、名古屋のにおいもしない。 どことなく、ハイカラで、洗練された、東京の雰囲気。町を歩いている女子たちもオシャレ。 町も綺麗で、きちんと整っていて、たぶん豊かなんだろうと思う。
もともと来る予定でなかったので、下調べもろくになく、とりあえずのガイド本片手に、妻と二人でよろよろふらふら散歩した。 ガイドブック片手に、ふらふらよろよろ散歩した。 中途半端な時間から中途半端に観光したぼくたちだったけれど、それでも充分、めぼしいところは歩いて回れる大きさだった。
松本というとクラフトフェアのイメージが強くて、松本に行けばそういうものにあれこれ出会えるのかと思っていたら、案外そういうわけでもなくて、 ギャラリーなんかもなくはないが、クラフトフェアにあるようなものが常時あるかというとそうでもない。 やっぱりその時期だけということなんだろう。 それから、上高地で見かけた畦地梅太郎のグッズ(画集、ポストカード、版画、etc.)。 松本に降りればいろいろ売っているのかと思ってあれこれ探したが、ひとつも見つけることが出来なかった。ぼくの探し方が悪かったんだろうか。 案外地上にはない、とそういうことなのかもしれない。見つけたときが出会いどき、というわけで。 そんなこんな、ぼくらの松本ふらふら歩き。
1,今晩一晩時間が出来たので、駅ビルの本屋に行って本を買う。せっかくの松本滞在なので、なんとなく二人とも長野ゆかりの本を選ぶ。ぼくは「空飛ぶ山岳救助隊」。妻は、信濃大町を舞台にしたミステリー「サイレント・ブラッド」。
2,「開運堂」
パルコの裏あたりにある老舗の菓子屋。道祖神をモチーフにした干菓子と白鳥の湖というクッキーを買う。 白鳥の湖は、スペインの修道院で考案されたというポルポローネという菓子で、幸福の菓子なのだそうだ。和菓子の落雁のような感じで、口にするとホロッと崩れるような口当たり、らしい(未食)。そのクッキーの表面に白鳥の模様が刻まれていて、デザインが洗練されている。ひとつひとつ小分けになった袋を止めるシールも白鳥だったりして、細かいところまで洒落ている。いつも思うことだが、こういうクラシックなもののデザインというのは、丁寧に作り込まれた感じがしていいものだ。ただし、デザインは非常に優れているけれど、それほど食ってうまいものではない、というのも事実。
3,「うなぎのまつか」
名前のとおりうなぎ屋。非常にうまいうなぎ屋である、らしい。看板は見つけたが、営業しているのかしていないのかも分からなかった。うなぎ大不漁のため不定休の旨の張り紙があったので、たぶん営業していなかったのだろうと思う。営業していてもぼくたちの懐具合ではちょっと敷居をまたげない格式のある感じだった。
4,「源智の井戸」
こんこんと水が湧き出していて、地元の人がペットボトルに水を汲んでいた。ぼくも手でひとすくいする。松本はあちこちに湧水や井戸があるのが印象的で、だから町が清潔な感じがするのだろうなあと思った。信州では何を食ってもうまいと感じたが、たぶんそれは水がうまいからに違いない。奈良で何を食ってもまずいのは、たぶん水がまずいからなのだろう。奈良と長野はなんとなく似ている感じがするが、唯一大きく違うのは水のあるなしのように思う。
5,「翁堂」
老舗の菓子店。妻が「ミミーサブレ」というサブレを買う。赤いトリ(インコ?)のキャラクターが外袋にプリントしてあるサブレなのだが、このキャラクターがかわいいのか気持ち悪いのか微妙なところだ。ちなみに妻がミミーサブレを買うと、ミミーの小さなシールをくれた。観光地だからなのか信州のひとはみんな親切だなあ。
6,「珈琲 まるも」
松本の名喫茶店。「ザ・喫茶店」という喫茶店で、ぼくは最近のカフェとかいうよりも、こういう喫茶店が好きだ。松本民芸家具の創始者である池田三四郎が設計を手がけた喫茶店であるそうで、店内も民芸家具で統一されて、雰囲気の良い店だった。クラシックが流れているのも重厚感。隣には宿屋まるももあってそっちも趣がありそうだった。こういう喫茶店がどの町にもひとつあるといいなあと思うような場所。
7,「とんかつ&カレー たくま」
名前のとおりとんかつとカレーの店。ここもすごく雰囲気のある店で、店内の調度が松本民芸家具で統一されていて、ウインザーチェアには、たぶんノッティングと思われる座布団ものっていた。ぼくらはここで昼飯を食べたが、カレーもとんかつもうまかった。きちんと自分のところで手作りしていますというような懐かしい味だ。メインだけでなくて、付け合わせのスープとか、サラダもうまくて、すごくいいなあと思った。メニューとか、箸袋とか、ナフキンとか、そういうはしばしのデザインも洒落ていて、名前は忘れてしまったが、信州では有名な版画家の手によるもの。こういう老舗のがんばっている店が町にあるというのはいいことだ。
8,「盛よし」
今回の信州旅行でいちばんの当たりだったかもしれない。松本なら知らない人はいないという超人気洋食店であるらしい。実際、たくさんの人の訪れる人気店で、ぼくらが行ったときも店は混んでいて、入るまでには少し待たなくてはいけなかった。ぼくは白身魚のポワレとクリームコロッケとハンバーグのセット、妻はエビフライ、クリームコロッケ、ハンバーグの黄金の3種盛りを注文した。どちらも1300円。注文まで少し待ったので腹が減っていたが、それをおいても美味い店で、ぼくと妻は美味い美味いと喜んでは食べた。メインはもちろんだが、サラダとか味噌汁とか、付け合わせもうまくて、付きだし風の、もやしのピリ辛炒めみたいなのもずいぶんとうまかった。あとはやっぱり信州だからなのか、野菜が何を食っても美味い。信州の野菜が美味いのはきっと水が美味いからなのだろう。1500円以下でこの味というのはやばい。人気があるというのもよく分かる。少しぐらい並んでもこの値段でこの味ならいいと思う。信州は何を食っても美味いという印象で、名店にめぐまれた松本というのは、小さいながらもいい町だなあ。
9,「松本民芸館」
行きたかったのだが時間が微妙でたどりつくことが出来なかった。民芸を知りたければここに行けばいいと思う。全国でも屈指の民芸館だそうだ。
10,「パンセ小松」
ザ・パン屋というような老舗パン屋。こうして見てみると松本は「ザ」が多い。近くまでいくとパンのいいにおいがして所在が分かる。有名な味噌パンを買う。味噌が生地に練り込んであるらしいが、それほど味噌の味が強いわけでなく、風味づけという感じ。日持ちしそうなパンなので、山歩きに持って行くと良さそうである。