
岡田直人さんという作家さんのマグカップ。いまいちばんの気に入りで、しょっちゅうこれに茶をつぎ足しては飲んでいる。たまごを立てるのによさそうなサイズで、そういえば色合いもたまご色をしている。形はカフェオレボウルを小さくした感じ。100ccちょっとしかつげないので、機能的ではないのだが、なぜかこの器が気に入りで、毎日これを使っている。機能的ではないのに使い易いというのが不思議な気がするが、機能性や便利さと実際にそれを使うかどうかは、別の問題なのだろう。ぼくはときどき山に行くので、あれこれアウトドアのザックを使ってきたが、見るからに便利そうに見えるのに、なぜか実際には使わないというものがよくあって、不思議だなあと思っていたが、そういうことなんだろう。
岡田直人さんは白い器作りで有名な作家さんで、あちこちの書籍や雑誌で取り上げられていたので、名前は知っていたが、あいにくこれまで展示会に行ったことはなかった。このカップは、京都の木と根という店で、ひっそりと売れ残りのようにたたずんでいて、たぶん、普通だったら買わなかったんだろうが、妻と二人、わざわざ京都に足を運んだ時だったので、何も買わずに帰るのはシャクな気がして、なんとなく胸に止まったこれを買ったのだった。実際はぼくらは別のものを探して京都に行ったはずだったが、なぜこんなものをぽつんとひとつぶら下げて帰っているのだろうと珍妙な気分だった。しかし結局そうして買ったものをいま一番使っているのだから、何が幸いするのか分からないものだ。
買い物のコツ、みたいなものがあったらこっちこそ教えて欲しいものだが、なんとなく、あたまでこういうものが欲しいと描いた機能的な製品より、実際に眼で見て手に取って、なんとなく体にしっくりくるものを選んだ方が、のちのちまで使っているような気がする。あたまで選ぶのでなく、心体で選ぶということ。しかしそうして買い求めても失敗したものはいくらでもあるわけで、これも絶対の法則ではないんだけど。買い物五割の法則とぼくは勝手に読んでいるけど、どれだけ事前に吟味したとしても、せいぜい五割成功すればいいほうで、写真でも買い物でも、バッターと同じくらいの打率しか成功をしないものだ。
実際に使ってみるまでは分からなかったが、岡田さんの器は、白い釉がかかっているのか、つるりとした使い心地、さわり心地で、これが口当たりをよくするというか、汚れがつきにくいので、洗うのも便利だったりする。器でも土の物の器は、茶渋が染み込むと取れなかったりするので、それを味とみる考えもあるが、そこのところは趣味が分かれるところだろう。あとは、普通の湯飲みやマグカップより高台(?)が広くてしっかりしているので、安定感がしっかりしていて、それも使い易いところ。形のお洒落なカップって、置いたときに不安定な感じがして、なんとなく使ったときに居心地が悪かったりするんだよなあ。そういう部分までこの器が考えて作られているのかどうかは分からないけど、実際に使ってみないと、そういうところは分からなかったりするものだ。