自然食とか健康食とか言われる世界では、白砂糖、白米は絶対悪として敵視されているらしい。特に精白された真っ白な砂糖は「口にするのもおぞましい」摂取を控えるものとされる。砂糖の過剰な摂取には様々な弊害があるとされるし、砂糖に中毒性があるというのもなんとなく分かる。白砂糖は覚醒剤の一種、白い麻薬、といわれることも。まあ、砂糖のウマさには人をとりこにするまがまがしい魔力があるのは分かるので（周りでよく見る光景だ）、摂らないにこしたことはないかな、というのはぼくも思う。
しかし、料理にまったく甘味を使わないのは味気ないかな、と思うので、そんなときにすすめられるのが代替甘味料である。いちばんポピュラーなのがてんさい糖。てんさい糖も糖の一種だけど、白砂糖よりはマシ、という感じですすめられる。価格も比較的安価で、白砂糖が１キロ１００円ぐらいに対して、４００〜８００円くらいで手に入る。砂糖はサトウキビの絞り汁だけど、てんさい糖は甜菜＝ビートの絞り汁。大根みたいな作物らしいけど、実はぼくも実物は見たことがない。で、それ以外の甘味料としては、アガベシロップ、メープルシロップ、甘酒（糀の甘さ）、米飴、等。とはいえこの辺になるとけっこう入手が難しくて、甘酒はとても常備できない、米飴は使うととろみも出る、メープルシロップは美味いけど独特の風味があるから和食に使うにはちょっと厳しい。この中で砂糖代わりに使えるとしたらアガベシロップだけど、アガベシロップってそもそも何だ？ 名前は聞いたことがあるが、ついぞ姿を見かけたことがない。自然食品の店とかでないと売ってないんだろうなあ。通販をすれば手には入るんだろうけど。
ぼくはあんま料理に砂糖を使わないけど（甘みが欲しいときはみりんを使うことが多い）、たとえば菓子を作るときには大量に砂糖を使うわけで、じゃあ、結局どの甘味を使うのがいいのか？ ということに興味があって、あれこれ調べてみたりした。つまり、「砂糖の代わりにガバガバ気にせず使って（なおかつ）体にもいい甘味料はあるのか？」という命題である。
まず、アガベシロップ。アガベシロップは「リュウゼツラン」という植物のエキスで（聞いたこともない）、砂糖よりも甘みが強いのにＧＩ値は低い。ＧＩ値とは血糖値の上昇値を示す値で、血糖値の乱高下はインシュリン分泌機能に悪影響を及ぼし、糖尿病のリスクを高めるなど様々な弊害があるとされる。故に血糖値はあんまりガバガバ上がったり下がったりしない方がいいらしいですよ。精白されたものほどこの値が高いらしく、砂糖なんてドカンと血糖値を上げるし、白パンや白米もだけど、白米の方がまだ糖の分解に時間がかかるのでマシらしい。加工度が高いほど糖の吸収が早く、血糖値がドンと上がる、という仕組みらしいスよ。アガベシロップはこのＧＩ値が低い。おまけに虫歯にもなりにくいらしく、子供に与えても大丈Ｖ。とここまで聞くと理想的な甘味料に思える（ただし値段をのぞく）。のだが、どうやらそんなうまい話はないらしい。つまり、体に糖として吸収されないということは、体はそれだけ異物として認識している、ということ。自然食品の世界では加工度の高いものを嫌うらしいが（それゆえ精白砂糖も嫌われる）、リュウゼツランから抽出されたエキスはそのままではシロップではないわけで、精製加工がされるんだけど、それは白砂糖と比べてどうなのか。アガベシロップの方が加工度が低い、というふうには思えない。もちろん、少量を食べる分に問題はないと思うが、砂糖の代わりにガバガバ使ったり、長年常食していると、健康の弊害も指摘されているらしい。
それからてんさい糖。てんさい糖は精白砂糖と違って自然な甘みでミネラルもたっぷり。とまことしやかに能書きされるが、どうもこれも眉唾らしい。市販のてんさい糖はちょっと茶色がかった色をしていて、ぼくはソボクに「素材の色」と思っていたけど、どうもそうではないらしい。本当のてんさい糖は白色に近い色で、茶色がついているのは、ザラメと同じ原理、カラメル化というか要するに「焦げて」茶色いらしい。それにてんさいはものすごく虫のつく植物で、栽培には大量の農薬が必要、と聞くと、うーん、それなら大量の農薬を使わないサトウキビの方がいいんじゃないだろうか、と思ってしまうのは、ぼくも人の子なんだろうか。
カナダ産でオーガニックのメープルシュガーというものもあるらしいけど、１キロ３０００円くらいするし（税抜）、オーガニックでもシュガーはシュガー。白砂糖よりはマシだと思うけれど、菓子作りやケーキ作りにガシガシ使うのは難しい（しその意味があるかどうかもよく分からない）。
とかいろいろ考えていくと、甘みを摂りたいときは「体に悪いこと」を自覚しつつ、ガッツリ砂糖を摂る方がいいんじゃないだろうか。その代わり盆暮れ正月くらいの間隔で。「毎日がフェスティバル」みたいに好きなだけ甘い物を食べていいと思う方がどうかしているとぼくは思うけどどうなんだろう。
