一生物なんてないと思う。
一生物なんてぼくたち消費者の財布をこじあけて無駄な消費をさせるための方便だよなあ。昔「レザーの○○」みたいなものを妙に買っていたことがあって、そのときに店員がささやいた「一生ものですよ」ということばに踊らされて、ずいぶん馬鹿な買い物をしたものだなと思う。
レザーが一生物なんて大嘘で、当時買った財布は、小銭入れが取り出しやすいようにガバッと開くタイプだったが、それほど固い皮でなかったのでガバガバになって小銭が飛び出すようになってしまったし、レザーのジャケットは重く、レザーのライダースは肩が小さく、レザーのバッグはぼくの荷物が普段重すぎるせいもあるんだろうが、結局重いし、雨が降るときはあまり使わない方がいいとか、取り扱いにも気を遣い、結局使わなくなってしまった。そうそう、レザーの編み上げブーツなんてものも履いていたが、あれも足が疲れるので履かなくなってしまった。ただ、レザーのものは放って置いてもカビが生えるし、何かと気を遣うので、ほとんど処分してしまったが、逆に気分がすっきりした。
一生物は重い。いろいろな意味で、金銭的にも、物質的にも、精神的にも。結果的に長くつかうものはあると思うが、はじめから一生物だと思って買うのは本末転倒だと思う。結果的に「いいものを買って良かった」と思うことはあるが、いいものを買ったから必ずしも良かったということにはならない。
だからといってぼくは安物を次々に買い捨てろというつもりもない。
ぼくが自分の買い物でいつも思うのは、
・高くても気をつかわず使える
・軽い
この二つを満たすように心がけている。
重いものは結局つかわなくなるし、たとえばセーターだったら、カシミアがいいのは分かるが(カシミアを気にせず買い回せるようなセレブは別にして)扱いに気をつかうからそれだったらウールで高級なものの方がいいし、シルクではなくて麻とかそんな感じ。以前で懲りたので皮にはめっきり手を出さない。
女性のブランドバッグが1個何十万円もするのと違って、ぼくが当時買ったものは全部合わせてもそれくらいだったと思うが、それでも高い勉強代を払ったもんだと思う。
買い物も写真も野球のバッターと同じというのがぼくの心がけていることで、三割打てば上々で、買う前にどれだけ吟味しようが考えようが、行って四割、五割は行かない。たとえどんなにがんばっても半分は失敗すると肝に銘じている。だから高かろうが安かろうがそれは変わらないと思っていて、一生物で失敗する分と、日常でなんとか手に届く範囲のいいものを買って成功する分と比べたら、一生物を買って失敗する分の方がはるかに多いだろうとぼくは思っている。