ウールの力を知ったのは思いがけないところからだった。アウトドアでウルトラライトハイキングと言って、荷物をできるかぎり軽くして、できる限り長い距離をハイクしようというトレンドがあって、そこで紹介されている道具なんかがおもしろくあれこれ見ていたら、そこにウールのアンダーウェアが紹介されていたのである。ウールというのは、実はアンダーウェアとしてたいへんすぐれた素材で、防臭効果があり、着替えのできないアウトドアでずっと着ていてにおわない、とか、夏涼しく冬暖かいとか、軽くて丈夫である、とか、最先端の合繊繊維以上のパワーを持った素材である、ということを知った。
アウトドア界ではやっているのはニュージーランドのメリノウールを使ったウェアであるのだけど、ぼくも実際使ってみて、大変便利だった。ユニクロのヒートテックというのがあるけれども、あれが着て暖かいのは実は通気性が悪くて蒸れて暖かいのであって、それに対して羊の毛は、着ていて暖かいとも寒いということもなくてどうということもない。実はそれが快適な温度調節がうまくいっている、ということなのだ。
実はぼくも以前はユニクロのヒートテックを着ていた。安いし暖かいし、これはいいと喜んでいたのだけど、だんだん冬を過ごすうちに、からだの肌荒れが尋常でなくなってきて、これはおかしいといろいろ替えてみたら、どうもヒートテックが良くないらしい、ということが分かった。ぼくみたいに肌の弱い人間には、ヒートテックは向かなかったみたいで、単発的に着るならまだしも、ずっと着ているのは肌が呼吸できなくて良くなかったらしかった。それでなくても肌が弱いのに、またさらに負担をかけて、悲鳴を上げたようだった。合成繊維から綿100%とかウールに替えたらましになったので、体というのは正直なものだと思う。実を言うとぼくは肌が強くないので、ウールだと少しちくちくしてしまうのだが、まあ、我慢できないほどではない。メリノウールという品種は、繊維が細い品種らしくて、比較的ちくちくしないのだがそれでも若干。ちくちくしない獣毛といったらカシミアとかそういうことになるのだけど、まあそこまでは。カシミアはカシミアで、ウールに比べると耐久性は若干劣るし、洗濯など取り扱いにも気をつかうので、そういうことを気にしなくてすむセレブリティの方はどうぞ。
ウールはそもそもそんなに洗わなくていい素材だけど、洗うときも、あんまり気にせずにじゃぶじゃぶやっている。ただ、ウールは使う洗剤と湯の温度は気をつけないと、フェルト化したり、風合いを損ねてしまうけど(カシミアなんかはもっと気をつかう)。あとは乾かすときべろんと干すと伸びてしまうのでその辺りも注意が必要。