
2013年に買ってこれはすばらしいと感動したもののひとつ。シラルガンのミルクポット。
湯沸かし、というものを長い間探していた。これまではヤカンで湯を沸かしていたのだが、どうにも湯が不味い。どうも、ヤカンの金気がうつるというのか、不味くて仕方がなかったんだよね。ちなみにヤカンというものの形状も好きでないので(あの形、洗いにくいし乾かしにくいよね?)「どうにかならんもんか」と長い間思っていた。あまり湯を飲まない家庭ならいらないのかもしれないけど、うちは茶飲みなので、湯沸かしは必須なんだよね。ちなみにうちに電気ポットはない。電気ポットで沸かした湯なんてまずくて飲めるかっていうんだ、てやんでい。
というわけで、長年の放浪の末たどりついたのがシラルガンのミルクポット。いや、存在は前々から知っていたんだが、現物を見たときにけっこう重かったのと、本当にこれで自分は湯を沸かすのかという疑念があって、購入を長い間ためらっていた。ミルクポットとはいえ、諭吉越えのの結構なお値段のものであって、そうポイポイ買えるものでもない。お金は大事だよー。要するにケチケチしていたわけです。
これで沸かすと湯がまろやかになるとか珈琲が美味いとかなんたらかんたら、商品紹介で見てはいたが、「ほんまにそうなのか?」とか、「重くて使わなくなるんじゃねえの?」とか、疑心暗鬼の数々。どうも、アウトドアのライトウェイト傾向のせいか、「軽くて使いやすいものが正義」という思いがぬぐえず、「重厚感あふれる多機能な高級品」に二の足を踏んでしまう傾向があるんだよね、オレってば。しかし、参りました。かずかずの人々がほめたたえるシラルガンのミルクポット、やはりそれだけのことはあった。重いっちゃあ重いが使いづらいほどではないし、(よく考えたらうちはフライパンなんかの方がよっぽど重かった)、うわさにたがわず液だれもまったくなく、すばらしいキレの良さ。そして何より湯が美味い。以前のヤカンのような金臭さはまったくなく、数々の人々が絶賛するように「湯がまろやか」。そして、持ち手が曲がった独特のデザインもよく考えられていて、日本のせまい台所でも、小ぶりで使いやすいんだよね。
湯沸かし専用にしようと思っていたはずが、サイズ感が使いやすく、底が厚手で蓄熱性の高い材質なので、煮物なんかをつくってみたが、なかなかよく出来た。あとは底1センチくらいに油を入れて揚げ物をしてみたが、油の温度が一定に保たれるらしく、なかなかいい感じだった。そのくせ、内側がツルリとした加工になっているので、汚れ落ちもよく、揚げ物をして洗った鍋で湯を沸かしても脂浮きもなく、普通に美味い茶が楽しめたのだから、なんとすばらしい。みなが良い良いというものはやっぱり本当に良いのだから、疑わずにもっと早く買っておけばよかったなあと思うものの、長い間買おうかどうか迷いに迷ってでもやっぱり欲しいあるいは必要だと買ったものの方が、値段にかかわらず最終的な満足度は高いように思う。必要に差し迫られてその場で即決したものは、結局失敗したものが多かった。
これまでの自分の買い物の当たり外れの傾向から鑑みるに、「軽くて安くて便利なもの」より、「重かったり多少使いにくくても機能性が高く結果的にいい仕事ができるもの」の方が、自分の性にはあっている気がする。便利なものは人類の敵ですよ、奥さん。