小麦には中毒性があるらしい。らしい、というのは拾い読みしただけだからどういう機序で中毒性がとか知らないからなんだけど、最近ときどき耳にするグルテンフリーとか糖質制限。糖質一般(砂糖、炭水化物)には中毒性があるらしいんだけど、なかでも小麦は中毒性が高いらしい。小麦に含まれるグルテンが・・・と書こうとして、おや、糖質制限は「糖質」だけど、グルテンはタンパク質だから話が違うじゃないか、と気づいたけど、まあいいや、小麦断ち(グルテンフリー)にすればおのずと糖質制限になるんだし、似たようなもんだろう。
グルテンフリー・ダイエットはアメリカではじまった食餌制限で、グルテンフリー、小麦を食べるのを止めましょうという食餌法だ。パン、パスタ、ケーキ、焼き菓子、ドーナツ、ラーメン、うどん。こうして見るとジャンクなものばっかりだなあ。女子供の好きそうなものばっかりだ。「パスタやめるなんて絶対に出来ない」
こうして見ると女子供の好きそうなものばっかりだね。「パスタやめるなんて絶対に出来ない」というのはもうグルテンの魔力にとりつかれている証ですよ、奥さん。「甘い物好き」というときに、「甘い物」が和菓子(まんじゅうとかモチとか羊羹とか)を指すよりも、ケーキとか焼き菓子とか菓子パンとかコムギの入ったものを言っているような気がする。ぼくはふだんパンとか洋菓子のたぐいはあんまり食べないんだけど、小麦に中毒性がというのは、なんとなく分かるような気がする。米もうまいっちゃあうまいけど、パンのうまさは別種だもんなあ。あの表面カリっ、なかもちっ、とした焼きたてのパンのうまさは、人を虜にするのが分かる気がする。ぼくもふだん食べていないときは平気だけど、いちどパンを食べると妙に食べたくなるもんなあ。小麦、砂糖、卵と乳、魔のトライアングルです。
それでグルテンフリーだけど、小麦悪というよりも、1960年代にはじまる緑の革命による品種改良が問題視されているのが興味深いところだった。小麦の品種はなんと一万種におよぶらしいのだが、原種に近いところでは染色体の数が20数本なのに対し、現在主流の改良種は90数本もあるらしい。20何本から90何本っておいおい小麦よ大丈夫か。小麦にはグリアジンとグルテニンというタンパク質が含まれるが、物理的な力を加えることで、グルテンという弾力性のある網状組織が形成される。グリアジンがねばねば成分、グルテニンが弾力成分らしいんだけど、品種改良された小麦のグリアジンがどうもタチが悪いらしい。だから小麦アレルギーの人でも、品種改良以前ならアレルギーが出なかったりするというから驚きだ。たしかに、人類はこれまでずっと小麦を食べてきたはずなのに、どうしてこんなにアレルギーが増えたのかといわれたら、品種改良した小麦のせいというのなら、それはそれで納得がいく。それでなくても化学物質過多のぼくら。そこに品種改良まで加わったら何が何やら分からんよね。品種改良で中毒性も増してるといいますしなあ。タバコや酒やヤクにおぼれる人間を世の中は嘲笑う風潮のようだが、小麦や甘い物から逃れられないぼくらも、似たような中毒なのかもしれないね。