
家に客椀というものがなく、客が来たとき、家人用の割れた湯のみを使うしかなく、「さすがにこれはマズい」と思い、引っ越しを機に買い足した。湯のみというか、珈琲でも冷たい茶でも何でも入れられるマルチカップ。すっぽりと手のひらに収まるくらいで、カフェオレボウルとかああいうのよりは小さくて、煎茶器よりは大きいサイズ。はじめはもっと白かったのだが、ごく初期の段階で、つい珈琲を入れたら「あっ」という間に茶色に染まってしまった。こういう器が染まりやすいのは知っていたので気をつけていたつもりだったが、ついうっかりしてしまった。ぼくとしては染まってもかまわないのだが、人によっては色の変わった器を好まなかったりするだろうから、それ以来客椀から格下げされて、ぼくの普段用の湯のみになった(以前使っていたひびの入った湯のみはその後割れてしまった)。引っ越し当時だったから客も来たのかいまはめっきり来客もなく、客椀はその後まったく必要がなくなってしまい、あえて買うまでもなかったのかもしれないが、まあそういう時期だったのだと思おう。買う時に店の人が「手にすっぽりと収まるのが愛らしい」と言っていたが、実際に使っていると本当にそういう感じで、手に「スポっ」と収まる。見た目もころんとして愛らしいが、見た目よりも使って良い器だと思う。以前使っていた湯のみは、見た目的には良かったのだろうが、どうしても好きになれなかったから、湯のみが入れ替わったのは結果的には正解だった。見た目はスタイリッシュだがどうしても好きになれない器と、見た目に特に思い入れはなくても使ってしっくりくる器とあるのと不思議な感じだ。これは吉田次朗さんという山口の作家さんのもの。時々発作的に器に興味のあることがあるが、これを最後にまったく興味が失せてしまった。必要なものが見つかるまでは探すが、見つけたら興味が失せる、というたちらしい。